へりくつ

    子供の頃私は、兄と喧嘩しては泣かせていた。冒頭に「お兄ちゃんは年上で男なんだから、腕力を使うのは反則!」と妹に釘を刺され文字通り手も足も出ない兄をさらに追いつめながら、自分の口から滔々と流れ出る詭弁に「これって屁理屈だよなあ」と呆れていた。

    そんな私もフランス人の屁理屈には太刀打ちできない。やつの言い分を私の頭は「筋は通っている」と処理するがお腹は「んな無茶苦茶な」と叫んでいる。私の臓器がそんな不毛な共食いをしている間にやつの論理世界は絶妙なワープを繰り返し膨張し、数分後、パンチドランクで妙に高揚した私は「そうか、お兄ちゃんはこんな気持ちだったんだ‥」と贖罪の捻れた達成感にひたるのみである。

    なので、私はフランス人相手には極力口喧嘩をしない。腕力行使も論外なので、つまり喧嘩をしない。夫婦仲がよいと評される裏には、こんなワケもあるのですよ。

    ところで、以下蛇足(子供時代の兄との共作。原典はルカ福音書)。

    12歳のイエスは両親とのエルサレム旅行の帰路に姿をくらました。三日間血眼になって探した父母は、首都の神殿でお偉い坊さん方相手に神学論議を飛ばしている息子を発見。安堵のあまりキレた母マリアはイエスを叱りつけた。
    「どうしてこんな事をしてくれたのです。ごらんなさい、おとう様もわたしも心配して、あなたを捜していたのです」。
    するとイエスは言われた、
    「どうしてお捜しになったのですか。わたしが自分の父の家にいるはずのことを、ご存じなかったのですか」。
    母は言った、
    「屁理屈言うんじゃありません」。
    イエスは答えて言われた、
    「へりくつってどんな靴?」
    母は答えた、「それを屁理屈と言うのです」。

    テーマ : 夫婦二人暮らし
    ジャンル : 結婚・家庭生活

    コメントの投稿

    非公開コメント

    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

    引用・転載は原則として歓迎ですが、事前にご一報ください。どのような論旨・目的での引用・転載か、把握しておきたく存じます。

    最新記事
    最新コメント
    カレンダー
    プルダウン 降順 昇順 年別

    04月 | 2017年05月 | 06月
    - 1 2 3 4 5 6
    7 8 9 10 11 12 13
    14 15 16 17 18 19 20
    21 22 23 24 25 26 27
    28 29 30 31 - - -


    カテゴリ
    メールフォーム

    名前:
    メール:
    件名:
    本文:

    リンク
    フリーエリア
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR