お姉ちゃんのまま老いる私

    夫が息子夫妻とスカイプで長話をしていると思ったら、ニコニコと頬を紅潮させて食卓についた。10月に、息子夫妻に赤ちゃんが生まれるのだ。

    10月は夫婦で日本へ行く予定だったが、予定変更して赤ちゃんの顔を見にカリフォルニアへ行こうかなと言う。よかったねと言いながら私は複雑な気持ちになる。夫はおじいちゃんになる。私はお姉ちゃんのまま。

    これから先、夫婦二人だけで年老いていくのだと思っていた。互いだけを頼りに、互いだけを思って。‥‥んなわけ、なかったじゃないか。夫には息子がいる。そして孫が生まれる。そうやって彼の命は繋がれていく。愛おしいものを遺していくのだ、この人は。この世に存在した意味も証拠も残らない私とは違う。

    やがて生まれた幼子を連れて息子夫妻が我が家に滞在する日も来るだろう。子供という生き物の取り扱い方を知らない私は、戸惑い呆れられ疲れるだろう。そんな先のことまで頭に浮かんで、食事中、私は黙り込んでしまった。

    夫にとってこれ以上ない喜ばしい報せを一緒に喜べない自分のケチさにも気が滅入る。仕方なく、夫に白状した。「あなたには、おめでとうって心から思うんだよ。でも私が嬉しいわけじゃないんだ。ごめんね」。

    夫の顔が曇るかと覚悟していたのだが、そんなことはなかった。「ああ、もちろんそれは分かるよ。僕だって、自分が浮かれてるわけじゃなくて、息子におめでとうって気持ちの方が強いよ」。

    夫は本当に優しい。お姉ちゃんのまま歳を重ねるしかない私の未熟さも痛みも、わからなくてもそのまま受け止めてくれる。同じ気持ちにはなれなくても、一緒に歩いてはいけそうだ。

    コメントの投稿

    非公開コメント

    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    Re: No title

    sakura さま
    鍵コメントありがとうございます。よかった貴ブログのURLをお知らせください。

    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます
    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

    引用・転載は原則として歓迎ですが、事前にご一報ください。どのような論旨・目的での引用・転載か、把握しておきたく存じます。

    最新記事
    最新コメント
    カレンダー
    プルダウン 降順 昇順 年別

    06月 | 2017年07月 | 08月
    - - - - - - 1
    2 3 4 5 6 7 8
    9 10 11 12 13 14 15
    16 17 18 19 20 21 22
    23 24 25 26 27 28 29
    30 31 - - - - -


    カテゴリ
    メールフォーム

    名前:
    メール:
    件名:
    本文:

    リンク
    フリーエリア
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR