姑心

    ノルウェーで日本語を教え始めてすぐの頃、印象に残った生徒がいた。私はまだ教え方もなにも分かっていなくて、日本語文法(国文法とは捉え方がかなり違う)自体、教師用マニュアルと首っ引きで覚えたようなもの。練習台にされた彼らにはご愁傷様と言いたいぐらいだ。

    私はドリル的な文型練習や発音指導もやりはしたが、日本語表現の文化背景の説明にかなり時間を割いた。日本語の教え方としては邪道なのかもしれないが、生徒たちにとって初めて接する真の異文化だったので、とても興味をもってくれた。

    話す私を情熱的な青い目で注視する彼は、私の背後の日本を見つめているかのようだった。動詞の活用を暗記するより先に、日本語的な発想を身につけていった。彼が文部省の奨学金を得て東大に留学することが決まったとき、日本に行ったらこの目に釘付けにされる女の子がいっぱいいるだろうなと思った。超ド級のイケメンがゴロゴロいる北欧では美男の範疇に入らないが、目力があった。

    彼は東大で同じ建築学を学んでいた女性と結婚し、数年後ノルウェーに戻った。勤め人を経て今は自分の建築事務所を設立している。夫婦の間には男の子が二人。奥さんも建築家として働く、共稼ぎの子育て夫婦だ。彼は日本人としか思えないほど自然で流暢な日本語を書く。

    つい昨日。偶然、奥さんのブログに行き当たった。旅行やグルメなど、セレブ〜な生活ぶりが綴られている。会ったことはないが、FBで写真を見たことはある。背が高くスタイルのいい、顔は??な30代女性‥‥。あの彼を捕まえたのだから、幸せだろうな。

    こういうふうに奥さんのことをあれこれ思う自分にぎょっとした。これを姑根性というのね。自分が目をかけた男の子に、ふさわしいとかふさわしくないとか、どっから出てくるのというこの発想。いやー、人生びっくり箱。まさかこのアタクシにあるとは思わなかった俗な心の動きに出会うたび、目玉が飛び出しそうになる。

    テーマ : 北欧
    ジャンル : 海外情報

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    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

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