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    ローズマリーの赤ちゃん

    "Mother and I, we have it good."

    父親の死後しばらく経ち、専門家との面接で、ジェィミーはこう答えたそうだ。

    昨年末に夫ジムを亡くしたローズマリーには、子供が二人いる。息子ジェイミーは26、娘ローレンは23。二人ともイギリス生まれドイツ育ちだ。

    ローズマリーと私の夫ディディエの付き合いは長い。20歳そこそこの頃、スペインでゴロツキ仲間だったのが始まりだ。10年以上経ち、まっとうなサラリーマンになってスペイン人妻ミラを伴いロンドンに赴任したディディエの近所に、なんとローズマリーが住んでいた。スペイン語の達者なローズマリーは、英語がダメで籠もりがちだったミラの面倒を見てくれた。二つの家族にはほぼ同時に子供が生まれた。ミラの赤ちゃんヨンと、ローズマリーの赤ちゃんジェイミーだ。

    生後6ヶ月で、ローズマリーの赤ちゃんは高熱を出した。医者は風邪だろう、様子を見るようにと言った。熱はどんどん上がり赤ちゃんは痙攣を起こした。髄膜炎だった。

    今、ローレンはイギリスの大学を卒業したばかり。ジェイミーは知的障害と自閉症を抱え、ドイツでお母さんと二人暮らしだ。父親の死をどのように受け止めているのか、母親にもはっきりとは掴めない。「母と僕、幸せです」。

    お父さんがいなくなった。それはとても怖い経験だった。何が怖いかというと、お父さんが定位置に居ることで保たれていた世界の均衡が崩れ去ったこと。ジェイミーは頭の中の世界地図を描き直さなければならなかった。そして、ようやくお母さんと僕、新たな世界の安定が出来上がった。

    赤ちゃんのまま、教養とか社交性とかの飾り物のないジェィミーの言葉は私たちの本質を剥き出しにする。

    うちのネコは“いつもの設定”が崩れるのが大嫌いだ。掃除、引越し、お客さん、飼い主の留守。夫や私が玄関を出て扉が閉まるとニャオニャオ泣き喚き、帰ってくると喜んだり拗ねたりする。でも、私たちが数週間以上帰らなかったら、代わりにゴハンをくれる人に懐いて「ゴハンくれる人とあたくし、幸せです」と言うだろう。

    ローズマリーの赤ちゃんがネコ並みという話ではなく、私たちみんなネコ並みで、それが正常なのだという話。自分の安全と生存。生き物として、それ以上の心配事はない。

    昨日はローズマリーの60歳の誕生日で、ロンドンに住むお姉さんが親類や旧友を招いて盛大なパーティーを催した。ハイデルベルクに住むローズマリーとジェイミーは飛行機でやって来た。近頃オトナになったというか、社交的な場面を以前より楽しめるようになってきた私だが、あまりに大人数で知らない人がほとんどだとキャパシティーを超えていたらしく、帰宅時にはグッタリ疲れていた。

    テーマ : ヨーロッパ
    ジャンル : 海外情報

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    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

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