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    義母の葬儀

    夫の母ジャクリーンが亡くなり、葬儀のためフランスへ行ってきた。

    ジャクリーンは半年ほど前から食欲がなくなり、ほとんど何も食べずにいた。最後の2週間は老人ホームで強制摂食や点滴を受けたが、身体に生きる意志がないことは明白だった。人体は、来る死に備えて自らを飢えさせることで準備をするのだと医師が説明した。飢餓により天然の麻薬であるエンドルフィンが分泌され、一種のマラソン・ハイ状態になり、苦痛や恐怖を和らげるのだという。

    訪ねてきた末息子とホームの食堂でメインディッシュに手をつけ、ワインをグラス半分飲み、デザートまで所望してから一週間後、ジャクリーンは息を引き取った。

    夫の父と兄弟は無宗教なので、6日後の午後に火葬し墓地で遺灰を撒く手配をした。それに合わせて夫と私がフライトを予約した後で故人のメモが見つかり、「簡素でいいのでカトリックで葬儀をしてほしい」とあった。そこで急遽、午前中に教会で葬儀をすることになったが、フライトの変更ができずそれには間に合わなかった。

    ジャクリーンはお姫様気質で、気まぐれに思いのまま生きた。大勢の子や孫も、思いっきり分け隔てて溺愛したり無視したりした。弔う人々の温度差にそれが表れていた。訃報を受けた夫はポカンとして「僕って冷血かな。みんながお悔やみを言ってくれるけど、べつに悲しくないんだ」と言った。そして、棺を炉に入れる前に葬儀屋が「では数分間黙想の時をもちます。それぞれに故人を想ってください」と言ったとき、母との思い出を探そうとしたが何も出てこなかったと言った。「子どもの頃の家族旅行とかの記憶はある。でも母はそこに居ただけで、母と何かしたとか話したとかの思い出はないんだ」。一方、夫の甥でジャクリーンの孫ニコラは、儀式がすべて済んだ会食の席でも涙を浮かべて祖母の思い出を話していた。

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    ある意味で、フランス女性らしいフランス女性だったのだ。美人。ひとくちに美人といってもイングリッド・バーグマンやグレース・ケリー型ではなくマリリン・モンロー型の、金髪でふくよかでちょっと愚かな女。その女に夢中になり生涯仕えた夫、愛され振り回され無視された娘1人と5人の息子たち。

    彼女の灰が墓地の一角の花壇に撒かれるのを見ながら、その意外に多くもあり僅かでもある量に少し驚いた。ノルウェー人の母をもつ16歳の曽孫娘が流暢なフランス語で詩を朗読した。撒いた灰の上に葬儀屋が一束の花を置いた。

    人生はいろいろあって、ものすごく大変だったり幸せだったり、ぎっしり詰まっている。それもこれも全部、一握りの灰になるんだなと、自分の将来を想った。

    テーマ : ヨーロッパ
    ジャンル : 海外情報

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    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

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