スペイン人の教え

    世俗主義が一種の宗教として支配するフランスに比べ、スペインは土俗的なカトリック信仰が根強い。血みどろ極彩色の磔像やら聖母像やら、どこぞの泉の水を飲めば病気が治るやら、原始人?と訝りたくなることしばしば。聖母(聖処女)の数や種類に至っては八百万(やおろず)の処女かという勢いだ。
    spanish pieta

    親しい友人ハビエルは、スペイン人の銀行家でメンザ会員(つまりオツムは悪くないはず)だ。彼と知り合ったばかりの頃、“史的”イエスがおそらくはローマ兵士に強姦されたマリアの産んだ子であったという話をしたら、彼は激昂した。

    私自身は、史実と宗教的物語が乖離していても信仰の妨げにはならないと思っている。処女降誕や復活がその人にとって心理的真実で、それが支えになるならば、史実を史実として受け止めることと両立し得ると思っている。私が信仰を失ったのはそれとは関係ない経緯による。

    シャルリー・エブド事件後すぐ、私が「パリのイマームが言った“我々はあなた方のユーモアを面白いとは思わない。だがそれは殺す理由にはならない。”に同意。フランス人は他者を笑い者にする傾向がある」というコメントをした。するとハビエルがご親切にも、「フランス人は他者を笑っているのではない。君にはすべてを斜に構えて面白おかしく捉えるというフランス流の皮肉の素晴らしさが分かっていない」と教えてくれた。

    自分の聖母様をバカにされたと怒りまくったハビエルが、寝ても覚めてもフランス流の皮肉に鍛えられている私に、他宗教をバカにするのは素晴らしい皮肉なのだと教えてくださったのである。もう、気の抜けた生温いシャンパンを飲んだみたいな白けが、胸の隅々まで広がった。

    テーマ : スペイン
    ジャンル : 海外情報

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    まさにスペイン人の教えさながらに、夫から教授を受けたばかりです。自由だと言って憚らない夫を目の前にして、私の自由を叫んでやったんです。そしたら「クレイジー」ですって。壊れた私の脳のせいにされ、方や自由、方や狂気。自分の痛みには敏感でありながら、妻の、他者の痛みには鈍感でいられる神経は、どこで買えるのでしょうか?
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    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

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