怒りの鉄拳を受けて

    “性根の腐ったドイツ人”という表現に、もの凄い勢いで噛みついて来た人がいた。何処の何方か存じぬので通り魔さんと呼ばせていただく。ドイツで大学を出て10年働いているそうで、ドイツ語もできない私にドイツの良さがわかるワケがないと怒り心頭のご様子。

    住んでいるくせにドイツ語ができないこと自体については、常日頃からさんざんドイツ人に罵倒されているので、土下座しておく。西ヨーロッパ中ほぼくまなく住んだのに日本語と英語しかロクにできないのは褒めたものではない。

    事実上リンガフランカである英語がまともに(これ大事)できると、できるのがドイツ語やスペイン語、ノルウェー語だけの場合に比べ、他言語習得の切羽詰まった必要がなくなってしまうという事情は、酌んでほしいのだけどね‥‥。

    通り魔さんの論理だと、私にはスペイン、フランス、フィンランド、ドイツの美点が見えずイギリスノルウェーのそれはわかり、日本語の他にはドイツ語しかできない通り魔さんには、ドイツ以外わからないことになる。

    私はノルウェー語できたけどノルウェーの良さはあまりわからなかったなあ。そりゃ長年暮らした国だから懐かしさは感じる。友達も多い。でも、公平に考えて特別いい社会とは思わない。星目がちな理想主義と頑迷な田舎者根性が剥離したまま浮遊する、石油成金国家。日本も、育った国だし愛着はあるけど、二度と住みたいとは思わないし。

    言葉がそれほどできなくても、その土地の雰囲気は感じる。スペイン語ができなくたってスペイン人の声が大きいのはわかる。ドイツ人が短気で独善的なのも、長々と話し込まなくてもわかる。長々と話し込めばなぜ短気で独善的なのか理解はできるのかもしれないが、短気で独善的なのが変わるわけではない。

    ドイツ人の国民性のおかげで、製品が壊れないことやスケジュール通りに物事が進む(鉄道を除く)こと、清潔なことなど、いい面も享受した。なにより嬉しかったのは野良猫を発生させないシステム。しかし収支バランスを見ると、これ以上つき合いたい国民とは思えない。

    人生短い。私には、能率や分単位の時間厳守や車が来なくても信号を待つこと、ベランダに洗濯物を干さないことは重要ではない。規則じゃなく愛に基づいて行動しようと志すことのほうが大切だ。

    それぞれ自分の優先順位により適う国をより好きになるのは自然なことだと思うけど。通り魔さんはドイツに惚れすぎてドイツ人になろうと頑張るあまり、ドイツ人並みに短気で独善的になってしまったのだろうか。

    テーマ : ドイツ生活
    ジャンル : 海外情報

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    No title

    その国を知っているから好きになったとは限らないと思う。なぜなら、同じ国にもし仮に住んでいても、見る、聞く、触れる世界は決して同じではないことが前提にあると思うから。その住む人の趣向によって、それまでの人生や培われた思考方法によって、それらはいかようにも作用するもので、わたしについて言えば、フランスの熱狂者、フランスに恋をしたひとたちに会うと、こうなれない自分を冷静にもうひとりの自分が眺めていたりする。この先もそうはならないという自信がある。

    ふと遠い昔のことを思い出した。NYのとある日系会社にて。わたしは当時、世界を放浪するためにこの会社からわずかばかりのおこぼれをいただいていて、ある日、この会社社長からレポートを提出するよう指示を受けた。まさにシカさんの記事のように、言語を知っていることがその国を理解していることではないといった内容を書いた。わたしはわずかしかフランスにはまだ住んでいず、フランス語もろくにできないけれど、フランスを知らないとは思ってはいない。その国を好きでたまらないというひとたちよりよっぽど冷静にこの国を眺めていると思っているし、好意という邪魔が入らないだけ、正鵠を射るのだとも思う。だからお叱りを受ける。

    その国を好きでい続ける理由がないわたしにとって、逆に長い付き合いがこの国とできる。自分をさらけ出し、本音でぶつかる。だって、特別な思い入れがないから嫌われたって憎まれたって別に構わないから。もし仮に、言語が上っ面な部分よりももっと確実ななにかを触らせてくれるというのであれば、真剣にフランス語学校にも通い勉強時間を増やそう。語学ができてもわたしは変わらないと思う。フランスの熱狂者にはならないという意味において。

    Re: No title

    人それぞれの経緯や立場によって同じ国でもまったく違う経験になる、その通りだと思います。私は、イギリスとフランスは配偶者として経験した/するので、そういう縁や必然性のない国の場合とは出会う人々も場面も異なります。

    イギリスとは、結婚より前に留学生として、また離婚のずっと後に駐在妻(?)としても住んだので、より複層的な関係になっています。でもそれだけで好きになったのではありません。もともと私自身の質にイギリスとの親和性があったから、あの国の言語をどこまでも習得したいと思ったのです。そしてあの国の印象は、英語習得の前後、英国人との結婚離婚の前後で、根本的には変わっていません。恋は盲目‥‥あばたが見えないのではありません。えくぼに見えてしまうだけです。

    ノルウェーに対してはMGBさんのフランスとの関わり方に似ていると思います。「選んで来たんじゃない、成り行きで逗留してるだけ」という気分が抜けず、心理的コミットメントが起きませんでした。長く住んだわりにノルウェー語が英語ほど上達しなかったのはそのためです。だからといってノルウェーを知らないわけではないです。日本に対してと同じく、長逗留の余所者・間近な傍観者として深く観察しました。ドイツについては観察するだけの興味すら湧かないと言ったら、通り魔さん激高のあまり憤死かな。

    もっと単純に、その言語の響きに惹かれなければ上達しません。私は牛が延々と文句を垂れているようなノルウェー語に恋ができなかったし、ゲゲゲ音だらけで喧嘩腰のドイツ語や大阪のオバチャンがまくしたてるようなスペイン語も好みじゃありません。フィンランド語は論外、日本のひどい方言のような音な上に単語レベルで他のヨーロッパ言語と無縁なので、目眩がしました。

    フランス語は、音としては美しいと思います。勉強はしていませんが四六時中耳にしているし、英単語の半分近くがフランス語起源なので、かなり見当がつくようになってきました。夫の家族や友達が喋っているのを尻目に黙ってご飯を食べながらニヤニヤ頷いているので、キモ可愛がられています。夫が引退したら住むことになるかもしれません。夫自身がフランス人は嫌いだと言っているので、どうなることやらですが。

    No title

    私が30年以上スイスに住んでいたというと、スイス大好き♡な日本人から羨ましがられるけれど、ある国に住むには二つの方法があり、お客として住み着くか、現地にとけ込む様に住むかで自ずと見えるものが異なってくると思う。もちろん独断の自論です。

    そして自分がどんな業種かあるいは結婚ならば相手がどんな業種によって(結婚相手の親族が医者や弁護士みたいなインテリ系、あるいは音楽などの芸術系、またはガテン系など)環境もガラリと変わるわけで、結局どの国の人間だって個々ではあまり変わらないかなと。ただ、国民性というものはあるし、それは言葉ができなくても感じ取れるものじゃないだろうか?とスイスに住んでみて改めて思った次第。

    私はスイスではガイジン、何年、何十年住んでもそう。それは日本に金髪碧眼の人が何十年住んでも「あ、ガイジン!」と思われるのと同じだし、その国を理解したからと言ってそれがイコール好きにはならないのは当然かと。

    スイス人は概ね愛国心の固まりなので、その素晴らしい国を好きになれない私は彼らには理解しがたいことらしい。スイスの素晴らしいのは時給がいいことくらいじゃw

    とにかく、誰を(どの国を)好きか嫌いかなんてそれぞれの感受性の問題なのだから、ドイツを、あるいはスイスを、フランスを熱愛する日本人がいても構わないし逆に大嫌いな人がいたってそれが健全、何故嫌い(例えばスイスドイツ語は品がないからとか)だということを受け入れられないのか、自分の意見は意見、それでいいのになと、今回の通り魔さん、私のブログの熱狂的スイスファンだった人のことを思い出させてくれた...

    Re: No title

    お客か溶け込むか、この分類に尽きますね。どっちがエラいとかは抜きに。

    元カレの一人に、CBS特派員がいました。滞日5年、渋谷・桜丘町の億ションに住んでいて、日本語はカタコト。究極のお客さんでしたが、日本および日本人についてジャーナリストとしての洞察はもっていました。

    日本の欠点をあんまりぐりぐり指摘されると私もつい"Do you think I don't know? You're only visiting, but I have to live with it!"なんて応酬してました。あ、これは古典的スラップスティック Fawlty Towers の引用。とんでもホテルの経営者が客の苦情にキレた時の台詞です。

    社会的経済的な立場、すごく関係あります。貧乏学生・貧乏単身者として暮らした場所。同じ貧乏でも貧乏主婦か貧乏大学講師か。無職でも夫が貧乏かそれなりか。場所がたまたまだぶっていても、ロケ地が同じのぜんぜん違う映画みたいです。

    とはいえ、典型を大きく外れた境遇や個人は存在するけど、そうじゃない大多数が作る国民性というものはありますね。

    スイスの話を聞いて思ったんだけど、小国の虚勢なのか意地なのか、根拠のない愛国心がノルウェーにそっくりです。大国に挟まれ脅かされつつ、いじいじと守ってきた大切な国境。チビだからって負けるもんかっていう自負。もしかして朝鮮半島もそうかな? 海という引き直しようのない国境をもつ島国(日本やイギリス)には理解しにくい大陸内小国家の特徴なんでしょうか。
    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

    引用・転載は原則として歓迎ですが、事前にご一報ください。どのような論旨・目的での引用・転載か、把握しておきたく存じます。

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