大英帝国へ帰還だ!

    ロンドンに戻ることにした。夫が自営になった今、なにもドイツに居なくてもできる商売なことが一つ。もう一つ、ロンドンの家を貸していた若夫婦が無断で怪しい人物に又貸ししていたことが発覚したため。

    ベルリンから引っ越してきたあの二人、見かけに騙された私たちもアホだが、食わせ者だった。彼はNY出身の黒人で自称ファッション関係の自営業、彼女はドイツ人で建築専攻の学生ということだった。時々家賃が滞って「ベルリンからの送金を待っている」と言っていた。

    私のけっこう当たる勘では、彼は元米兵でベルリン駐屯時代にアメリカ黒人音楽を好む母娘と仲良くなった。検索結果によると最終学歴はクイーンズのかなりやばい高校。武器に目がなく射撃場での自分の写真などをいっぱい載せている。彼女はワルシャワ出身の母親とクロイツベルク(移民街)に住んでいた。

    彼が学歴も定職もないのにロンドンでわりと高い家を借りて無収入の学生である妻と暮らせていたのは、定収入=軍人年金があるから。イラクかどっかで身体か心に怪我をしてその補償を受けている可能性は高い。

    又貸しが発覚した過程で私たちのロンドンの代理人がしきりに連絡をとったところ、あの家に彼は住んでいる形跡がない。カウンシルの住民税課では彼の登録は消され、携帯も解約されているし固定電話に出るのは彼女のみだ。要するに別れたらしい。そして家賃の支払いに困った彼女が、勝手に他人を住まわせていたということのようだ。

    その他人というのがまた派手なことに、南米出身の自称モデル/歌手、昼間の本業は小学校非常勤職員、夜の本業はコールガールだったらしい。さらにカウンシルから生活保護やらなにやら騙しとっており、そのために私たちの住所を使っていた。

    三人が三人、シカ正直な私には思いもつかない機転というか、そこまで不実なことをして何が面白いのか理解できない。貧乏に育つとさもしくなるというのなら、私だってなってるはずだけど。

    他人の不実に曝される度、私はべつに何もしてないんだし相手の問題なんだから事の解決に当たりさえすればよいので気にすることはない‥‥と分かっていても、ドワワ〜ンと落っこちてしまう。

    私のうつ傾向は、生来の気性と繰り返された外傷体験によって脳内物質伝達回路が壊れているためで、気の持ちようではどうにもならない。絵に描いたように薄暗くなっている私を見て、夫はコワレモノのように丁寧に扱ってくれる。ネコがビビっている時と同じような感じだからと、心得たものだ。ありがたいこってす。

    そんなわけで、店子に退去勧告を出し、年末までにはロンドンの我が家に引っ越すことになった。ネコは中庭つきの家をたぶん気にいってくれると思う。私も、能力はあっても性根の腐ったドイツ人にサヨナラして、いい加減で仕事のできないイギリス人、でもどっか人間味と優しさのあるイギリス人の国に帰るのを楽しみにしている。

    テーマ : 海外生活
    ジャンル : 海外情報

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    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

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