奢れる春

    フランス人のうぬぼれを見ていて思い出す詩がある。

    「むすめ二十歳 櫛に流るる黒髪の 奢りの春の 美しきかな」 ー 与謝野晶子

    はたちまで生きながらえるかさえ怪しかった娘が、身体だけは大人になり生意気に留学などしてロクでもない恋人を作り「私には失敗する権利がある!」と言い放ったとき、母はこの詩を口にした。ついこの間まで母が食べさせなければ自分の命さえつなげなかった子が、傲然と自立を宣言する。

    若いということ。あの根拠なき全能感。その圧倒的な生命力は、くやしいほど美しい。(だからフランスは美しい。)

    慰めは、誰しも若いときがあり、誰しもそれを失うことぐらいだ。

    私は自分のかけらもこの世に残すことができない代償として、自分の命を削って守り育んだ命が私を嘲笑し突き放し、他の誰かと結ばれていくのを見なくてすんだ。年老いて悲しみと悔しさと名残惜しさに苛まれる母を見ていると、つくづくそう思う。

    ママ、大好きだったんだよ。今も愛しているよ。ずっとママの子ではいられなかっただけ。

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    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

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