街角で阿鼻叫喚

    夕方買い物に出た。家の近くの交差点を渡ると、飛んで火に入る夏の虫。雑貨屋の前で突然、赤子を抱き幼児の手を握ったトルコ人女性が私に「助けて!(ドイツ語)」と縋る。見ると、もう一人の子供がドイツ人男性に片手を引っ張られ、母親らしきそのトルコ女性と私を交互に見つめて泣き喚いている。

    道路の真ん中には市電の停留所。傍観者が注視している。一番近くにいる他人たる私は、不運なことに臆病者でドイツ語もできない。この男は子供の父親? あるいは児童保護局かなんかの役人? とにかく、母親から子供を引き離そうとしている。それが正当な理由によるものかどうかは論点ではない。

    私が「ドイツゴワカリマセ〜ン」とか言っているうちに、停留所にいた女性がツカツカと道を渡ってきて「こっちおいで!」とトルコ女性と子供たちを雑貨屋に突っ込んだ。その後どうなったのかは知らない。20分後、買い物を終えた私が同じ道を戻って来ると、さっきの親子と別の女性が仲良く交差点を渡って行くところだった。

    私はなんであの時、泣き顔で訴えてきた女の子を両腕で受け止めなかったんだろう? ドイツ語できるできない関係ない。「こっちおいで!」と介入した女性は、ドイツ語分かる以前に、たぶん母親なのだ。他の母親と子供が苦しむのを黙殺しない“母の度胸”があるのだ。(経験上、ドイツ人はこういう場面でわりと冷たい。イギリス人のように見ず知らずの他人が困っていると自然に助けるという隣人愛はドイツ人一般には感じない。)

    母親でない私の愛情は空虚だ。好んで子なしの人生を選んだわけではないけど、そのために半人前扱いされることに憤りながら、それゆえに半人前な部分があると認めざるを得ない。

    アカの他人の阿鼻叫喚にドワワ〜ンと落っこちながら作った夕飯は、それなりに美味しかった。夫は2回もおかわりをしてくれた。私の愛情なんて、こんなちっぽけなものさ。へい、イカのトマト煮ケイパー入り一丁あがり。

    テーマ : 国際結婚
    ジャンル : 海外情報

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    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

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