悪夢過ぎて笑える英国政治情勢

    鬼婆が可愛く見えるほどの魔女が首相になった。EU離脱に“成功”したお山の大将ボリスが唐突に首相選から降りたのは、魔女に「アンタさえ降りれば私が勝てるんだから降りなさい、その代わり大臣にしてあげる」と言われたからにちがいない。

    二人とも、自分らの権力争いが国家にEUに世界にどんな迷惑を及ぼそうと毛ほども気にしていない。いや、どいつもこいつも。House of Cards を地でいく破廉恥ぶりには頭がさがる。

    テレサ・メイといえば、合法移民の私まで国外追放しようとした張本人、元法務内務相。CAPITA を雇って非EU移民は問答無用で放り出すことにしたのも、非EU市民と結婚したイギリス国民に収入下限をもうけて、貧乏人には家族とイギリスで暮らす権利すら与えないというルールをまともな国会審議にさえかけず実施するという暴挙に出たのも、この魔女だ。
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    権力のためには人殺しでもなんでもする人が首相になった。

    もう笑うか正気を失うか泣くかしかない英国情勢です。

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    Full circle - エジンバラ

    31年ぶりに、エジンバラを訪れた。

    エジンバラは、1985年の7月、私が語学留学生としてヨーロッパでのおぼつかない第一歩を踏み出した街。成田からモスクワ乗り換えでヒースロー、地下鉄でキングスクロス駅、そして夜行列車で一晩かけて辿りついたエジンバラは、変な匂いと音と色に包まれていた。ダミ声で鳴き続けるオス猫のようなバグパイプと、やっぱりオス猫のオシッコ的なピートの匂い。肌寒い7月の空を背景に、真っ黒に煤けた石造りの建物が聳える。スーツケースを引きずって寮への坂を登る私には、なんだこれはと思う気力も残っていなかった。

    Mylnes Court

    これがその寮。エジンバラ城のまっ隣にある古い古い建物で、普段はエジンバラ大学の寮だ。あの頃の英国語学留学といえば、長期の場合ホームステイ(というか下宿)だがサマーコースは観光や遊びを兼ねた企画で、ちょうど休み期間で空いている大学寮を借り切って合宿の楽しみも提供していた。寮にいたのは、ヨーロッパと中東から英語の練習に来る高校生〜大学生ぐらいの若者たちと、世界各国で教えていて夏だけ帰省と息抜きを兼ねて短期バイトに来る英国人教師たち。日本人の語学留学ブームはまだ始まる直前で、私はけっこう珍しい存在だった。

    ほとんど喋れなかった私は最初のクラス分けで中下級に入れられた。クラスメイトは中東人、スペイン人、イタリア人で、何も理解していないし言う内容もないのに大声で存在を主張していた。担任は年配のスコットランド紳士イアンで、最初の金曜日のレッスン後に私を階段でつかまえ、パブに誘ってくれた。彼は私を寮から Royal Mile(城と宮殿を結ぶ表参道)を跨いで階段を降りた所にある、昔は処刑場だった広場に連れて行った。Grassmarket。何軒ものパブにぐるっと囲まれている。

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    その晩、イアンが同時に受け持っていた中上級の学生たち(ドイツ人、オランダ人、北欧人)は好奇心からいろいろ話しかけてくれた。自信のない私は、紙ナプキンやコースターに走り書きで受け答え。イアンはそのコースターをつまみ上げて音読し、「きみは話の内容をよく解っているし、難しいアイディアも表現できる。書いたことを声に出して言ってごらん。ここにいるみんなより上手なんだから」と微笑んだ。「月曜日から、中上級に来なさい」。

    中上級には、一人だけスペイン人が混じっていた。スペイン人にしちゃ高度な英語を話す彼は生物学者で、秋からアメリカでポスドクをするので英語に磨きをかけに来ていたのだ。優しくてハンサムで頭のいいマヌエルに私は一目惚れした。少し年上の彼は、英会話ばかりか社交も拙い私を妹のように構ってくれたが、異性としては興味ゼロのようだった。マヌエルのルームメイトはスイス人のアランで、ある晩マヌエルと一緒にRoyal Mileのパブをはしごでイアンにウィスキー指南を受けていた時に紹介された。

    Royal Mile

    ちなみに私は、他人と一緒の部屋で寝起きする図太さがなかったので、差額を払って一人部屋にいた。慣れない夜遊びで疲れて寝坊した翌朝、ベッドのあるロフト部分から勉強部屋に転げ落ちた。シャワーを浴びようと廊下へ出ようとしたら、ドアの下に手紙が押し込まれていた。うにゃ? なんかの苦情? ドアを開けると、薔薇の花束。花屋の綺麗な花束じゃなくて、いかにもどっかの庭から失敬してきたのを輪ゴムでとめたやつ。

    こうして私の初恋は始まったのだった。ヴァイオリン、お願いします。三味線じゃないってば。

    (続く)

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    カズオ・イシグロの英国、愛する英国

    国民投票結果を受けてカズオ・イシグロが書いた記事。その中に、日本人の子として英国に育ち、日系英国人として生きてきた彼自身の痛切な思いを吐露する部分がある。とても心に響く文章なので以下に抜粋(ご参考までに拙訳もどうぞ)。


    "I believe here we need to have some faith in the people of Britain. Even after the shock of last Friday’s result, I still retain that faith. I speak as a 61-year-old man of Japanese birth who has lived here from the age of five; who has observed and experienced this society from the perspective of a small, visibly foreign child who was for years the only such child in his school or his wider community; as someone who has lived in various parts of the country as it went through the major upheavals of the next four decades. The 1970s and 1980s, for instance, saw immigrants come and settle here in large numbers from the Caribbean, the Indian subcontinent and Africa, even as the country went through one economic crisis after the other, and yet the National Front, the BNP and other racist parties have never been able to gain a proper foothold here, not even to the extent of their counterparts on the European mainland, and have crumbled one after the other. The Britain I know — and deeply love — is a decent, fair-minded place, readily compassionate to outsiders in need, resistant to hate-stoking agitators from whatever political extreme — just as it was in the first half of the 20th century when fascism rampaged across Europe."


    「ここに至って私は、英国の人々を信じる心をもたなければと思う。先週金曜のショッキングな結果を受けても、私はまだ信じている。日本に生まれ5歳からこの国に暮らしてきた61歳の者として。見るからに余所者の姿をした小さな子の視点で英国社会を眺め体験してきた者として(そんな姿をした子は学校でも近所でも私だけだった)。この国が以後40年間の激変の波に揉まれる中で国内あちこちに住んだ者として。たとえば1970〜80年代には、次々に襲う経済危機のただ中にカリブ諸島やインド亜大陸、アフリカから大勢の移民がやって来て住みついた。それでも、BNPやナショナルフロントなどの人種差別主義政党は(ヨーロッパ諸国のお仲間ほどにも)まともな足場を築けず次々崩れていった。私の知る英国、深く愛する英国は、真っ当で公平な場所。困っている人には余所者でもためらいなく手を差し伸べ、人々のヘイト感情を掻き立てようとする政治的思惑に易々と惑わされない英国だ。ファシズムがヨーロッパ全土を席巻した20世紀前半にもそうだったように」


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    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

    引用・転載は原則として歓迎ですが、事前にご一報ください。どのような論旨・目的での引用・転載か、把握しておきたく存じます。

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