男言葉、女言葉

    日本語を母語とする女性の皆さんに質問です。あなたは、心の中で思うとき、女言葉で思いますか、男言葉ですか。

    私が25歳ぐらいの頃、東京の寿司詰め通勤電車で痴漢に遭ったときのことです。私の心に咄嗟に浮かんだ言葉は「おんどりゃー」でした。そして肩越しに痴漢を睨み、低い声で「あの、男なんですけど」と言ったのです。すると痴漢の手が引っ込み、次に痴漢の全体がモゾモゾと人ごみの中を後退していきました。

    自分の反応について何の疑問ももっていなかったので今まで思い出さなかったのですが、普通の女の人は「おんどりゃー」とか、心の中でも思ったりしないのでしょうか。そしていくら咄嗟のことでも、自分は男だと確信に満ちた声で宣言したりは、しないのでしょうか?

    女にいちゃん

    「あんたは男や」と母が言った。

    旅行先で、自分の荷物を肩にかけ、両親のスーツケースを両手で引っ張ってスタスタと前を行く私を見てそう思ったそうだ。脚が長くて歩幅が大きく、足もデカい。膝から下で歩く日本の女性と違い、腰で歩く。頭を上げ前を見据えて、なんかこう偉そうに闊歩するというのだ。

    なるほど‥‥。偉そうにしなければ足元を見られる文化で生きてきたせいもなくはないと思いたい。だけど、夫の親友で精神科医のイヴに、言葉もロクに通じないのに「きみ、子供の頃男の格好してなかった?」と言い当てられたことがある。つまりモトからそうなんだねえ。

    男の心を持ちながら女の身体であるせいで、子供の頃から、男によって、ここにはまだ書けずにいる酷い目に遭ってきた。おかげで私の中で男嫌いと女嫌いの両方がせめぎ合い、理不尽な苦しみを抱えてきた。おかげで奇妙な生き物になってしまった私がどうやら普通の幸せを掴んだのは9年前、今の夫に出会ってからのこと。

    昨夜、母がしみじみと「男の手で負わされた傷は、男にしか癒せない。ママには癒してあげられなかった」と語った。

    日本に着きました

    今朝早く羽田着の飛行機で日本に着きました。2週間ちょっと滞在します。なんか台風だったそうですね。でも私の感想はただ「日本、暑い‥‥」。

    ヘタレおばさん

    スーパーで、瓶ものを買うからと夫にトロリーを持って行かれてしまい、手籠だけで買い物してたらすごい重量になった。ギックリ腰が怖いので、カゴを床に置いて足で蹴りながらレジへ向かった。

    よいしょっと持ち上げかけると、レジの女の人が「今締めるとこだから隣のレジに行け」と目で言う。すごすごと、私はカゴ蹴りを続けて隣のレジへ。するとこのレジの男の人も「今、締めるとこ‥‥」と言いかけた。私は突如、心の筋肉がメリメリと盛り上がり、怖い笑顔で「たらい回しにはされません!」と言い放った。超人ハルク。男の人は微笑んで肩をすくめ「わかったわかった」とレジを通してくれた。

    ヘタレの私が‥‥。なんかもう凱旋気分で駐車場に行進し、自分の勇敢な行動を夫に報告した。「きみ、大人になってきたね‥‥30年遅いけど」と夫。

    世間では、おばさんという生き物は逞しいという誤解が蔓延している。いえいえ、私のようなヘタレおばさんも大勢いるのですよ。

    テーマ : ヨーロッパ
    ジャンル : 海外情報

    言葉の独り歩き

    最近何度か、私の書いた物が文脈から切り離されて独り歩きしているのを目の当たりにした。ツイートや掲示板上や‥‥拡散してくれるのは有難いと思うべきなのだろうけど、思えない。中には引用であることすら明確にせず、あたかも自分の言葉のように掲載している人もいる。

    奇特なまでに善良な人は直接コメントをくれるし、こういうところに載せましたと連絡までくれる。それは例外。ほとんどの人は(驚異的アクセス記録を残している割には)黙って借用していく。

    インターネット上で物を言うということは、そういうことなのだと諦観してかかるしかない。

    私は有名になりたくて書いているわけではないので、著作権の話ではない。私の言葉に共感しシェアしてくれること自体は嬉しい。どんな人がどうして共感してくれたのか、その人の“文脈”が知りたくなる。心地が悪くなるのは、私の“文脈”を無視してシェアした人が自分の論旨の補完道具に使っているときだ。

    私も他人の言葉を引用することはあるので、同じことをしているわけだ。されることで初めて自分のしてきたことの意味がわかったのは収穫だ。

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    テーマ : ブログ
    ジャンル : ブログ

    人種の不条理

    朗らかだったMさんが沈んだ表情をしている。イギリスが嫌になってきた、と。

    この間観た映画で、病院でインド系イギリス人の主治医に診断を受けたご婦人が憮然として「イギリス人のお医者さんを呼んで」と言う場面があった。「もちろん」と主治医は言って、エジプト系イギリス人の医師を連れてきた(プッ)。

    アンゴラ系スペイン人のMさんは、ロンドンで医療関係の仕事をしている。仕事の場で心ない言葉を浴びせられたりするのかもしれない。あるいは街で、ステレオタイプな決めつけを受けることもあるはず。それでも華麗に超越しているかに見えた彼だが、いろいろ重なったりすれば、いつもは流せていたことが心に刺さってきたりもするだろう。

    「嫌になったなら、文句言ってるよりどこか他を探したらいい‥‥ってわけにもいかないか。でも嫌いな国に住み続けるのは悲しいね」と夫は言う。「それは違うんだな〜」と私は言いかけて、ああ、夫に分からせる方法はないんだと思った。人種差別の痛みは、されたことのない人にはどうしてもわからない。

    人種差別の程度でいえばイギリスはヨーロッパの中では軽い。大半の、少なくとも教育を受けた層のイギリス人は、過去の負い目もあって、ドイツ人やフランス人のようなあからさまな優越感をもっていない(あっても露見させることは少ない)。移民の歴史が長いイギリスでは、スペイン人や北欧人のような無知ゆえの剥き出しな好奇心もない。さらにロンドンでは、イギリス白人のほうがマイノリティーといえる地域も多い。

    それでも、だ。肌の色が白くない人は、その濃度と性別と年齢層に従って、いろんな目に遭う。女性より男性、年輩者より若者、そして肌の色が濃ければ濃いほど、経験の不快度も上がる。色白の極東人で中年女の私はMさんほどの目には遭わないが、不愉快な思いをしたことは数知れない。どうしても差別を避けたければ、肌の白い友達や家族と常に一緒に行動しなければならなくなる。

    暴力か、自由の剥奪か。究極の悪選択を常に迫られることの理不尽さ、不当さ、残酷さは、気が狂いそうな痛みをもたらす。軽傷の私ですら喚いたり泣いたりしたことがある。30代黒人男性のMさんがどんな思いで生きているかなんて、体験したことのない人に理解しろと言っても無駄なのだ。Mさんの日本人妻も、自分の経験から想像はできても完全にはわかってあげられない夫の痛みを、側で見ていることしかできないだろう。

    人種、国籍。夫婦の間でも越えられない壁はある。国際結婚は、壁の存在を認めた上で愛を失わない努力の積み重ねでもある。

    テーマ : 国際結婚
    ジャンル : 結婚・家庭生活

    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

    引用・転載は原則として歓迎ですが、事前にご一報ください。どのような論旨・目的での引用・転載か、把握しておきたく存じます。

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