フランス女は、フランス女に生まれるのではない。

    フランス女になるのだ。

    ボーヴォワールはフランスに生まれたからこそ、この慧眼をもてた。

    姪たちを見ていて常々思う。フランスでは、女の子は思春期の訪れと同時に女になる。というか、“女”というチンドン屋をはじめる(最初の2〜3年間は野暮ったさと技術の拙さで、まさにチンドン屋状態)。しかし歌舞伎よろしく早くからはじめる分習熟も早く、大学に入る頃にもなれば他のヨーロッパ諸国の同年齢に比べて格段に“女”らしくエレガントになっている。

    エレガンスは容貌の問題ではなく、態度のことだ。チンドン屋修行の始まる12歳頃から、フランス女子はエラソーに振舞う訓練もする。男子には、思わせぶりにして振り回す。逆に振られたら、女子でつるんで哲学する。ダイエットと化粧の練習は怠らない。恋愛対象になること以外、人生の意味なんてない。けど、食いっぱぐれないために、いちおうバカロレアはとっておく。

    ここまで書くと、日本のおバカ娘とどこが違うのかと思うだろう。違いは、“女らしさ”の定義にある。

    フランス女が目指すのは、官能的、性的、優美で成熟した女。女王と言っていいだろう。
    日本女が目指すのは、あどけなく、弱く、無防備で無垢で低脳な幼女。王女と言うにも幼すぎるだろう。

    そこで終わればまだいいのだが、日本の内股な“幼女”は同時に、すべてを包み込み耐え忍び養い続ける“太母”でなければならない。フランス女のように“女”一辺倒でいるのもご苦労な話だが、それどころの難易度ではない。

    人間のメスの大半には、幼女、娘、女、母、老女のステージがある。猫を飼っているとわかることだが、人間以外の動物は、生涯のうち、子供時代と生殖期(メスに限っては生殖に伴う短い子育て期)以外の大方の時間を、単なる個体として過ごす。人間のメスが、そのパターンに従ってはいけない理由がよくわからない。

    フランス女は子供時代を除き一貫して“女”という個体であるので、七変幻かつ一度たりとも個体でない日本女に比べれば楽だろう。ただし、“女”というトテツモナク不自然なものになりたがる文化には、私は首を捻りすぎて肩が凝ってしまう。

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    X親権 ○子の権利

    フランス人との離婚に際し、8歳の子をフランスの夫の許に残し単身日本へ帰りたいという女性が相談してきた。

    彼女の話には、有責、慰謝料、親権といった言葉が出てくる。それだけで、フランスに住んだ年月があまり長くないのだなと分かる。案の定、二人が出逢って結婚したのは日本で、フランスへは子が生まれてから移住したそうだ。

    どこから説明していいのやら。第一私はフランスに住んでもいないし子もいない。在仏の日本人弁護士に相談してくださいとは言った。しかし応急手当というか、とりあえずのアドバイスをとおっしゃるので、下記のようなことを伝えた。

    フランス含む欧州では、離婚はどちらか一方がイヤになった時点で成り立つ。家庭内暴力など重大な事由があれば別居と同時(即時)に離婚成立。二人のどちらにも何の非もない場合でも、一方がもうイヤと思えば十分な理由になる。もう一方が離婚したくないと言い続けても別居後1年ないし2年で離婚は受理される。片方の浮気や借金が原因であっても、有責という考え方はない。

    だから慰謝料というものもない。離婚に於いては、結婚生活中に生じたすべての資産が平等に分割される。婚前契約で明確化されていない限りは、片方が結婚前から継続していた事業などによる資産も分割の対象になり得る。

    親権というものはなく、むしろ子の権利がある。つまり子には両親をもつ権利があり、両親に会う権利があるので、片親が勝手に親権放棄しますと言って子の人生から消えることは許されないし、もう片方の親があなたみたいなアホには子を会わせませんなんて言う権利もない。

    彼女の場合、慰謝料も親権もいらないので日本に帰りたいと言っているわけだが、まず慰謝料なんて、いるもいらないも、はじめっからない。そして子には彼女に会う権利があるので、彼女一人日本へ帰ったとしてもかなり頻繁に子に会いにフランスへ行かねばならず、その費用は彼女が自分で捻出せねばならない。

    彼に経済力があり、彼女にないのなら、その辺は離婚自体の協議とは別に、二人の間で相談するしかないと思う。

    日本の考え方とはあまりに違うので、欧州に慣れる前に欧州で危機を迎えた彼女の混乱はたいへんなものだろう。子も巻き込まれることだし、少しでも落ち着いて正しい方向へ舵取りできるように、祈るばかりだ。

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    フランス人

    「フランス人ったってよく知ってるのはあなたの家族以外じゃ片手で数えられるぐらいだし、フランスに住んでもいないし‥‥だから全然一般化はできないんだけど」

    ふんふんと夫は聴いている。

    「フランス人の表面に軽く触れただけの私の印象を言えば、理屈っぽくて皮肉屋で話が面白いけど、温かみは‥‥フランス人と聞いて連想する言葉じゃないな」

    「それは当たってると思うよ」と夫。
    フランス人らしからぬ温かな微笑みを浮かべている。

    「自己中ってか、えらく自分に興味もってるよね。自分のイメージとか自分の偉さとか自分の問題とか。必ずしも自信家ってわけじゃないのに、傲慢」

    「よく見てるね。確かに、フランス人はヨーロッパでもずばぬけて自己中だな」

    --------------
    昔、クリエイティブ・リスニングという技術の講義を一回だけ受けたことがある。かいつまんで言えば、相手が話している間、一切の考えを止めてひたすら傾聴するということのようだ。

    これが言うは易しで、ふつう私たちは相手が話している間、常に自分の反応を考えているものだ。相手の言っていることを自分の経験や知識に参照し、自分の意見や自分の反論を組み立てている。しかし実はその作業自体に心の半分がかかりきりになるので、相手の話は半分しか聴こえていない。

    この“自分”を一旦、といっても誰かが話している一かたまりの時間なんて長くて数分なのだが、とにかくその数分間停止して、“相手”に明け渡してみましょうというのが、クリエイティブ・リスニングの主旨らしかった。
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    これ、実はフランス人のもっとも苦手な技なのではないか(私も得意ではない)。フランス人同士電話で話していると、5分間に最低5回は「最後まで言わせて」「聞いて」に類することを言い合っている。それだけ互いに相手の話の腰を折っているわけだ。フランス人に何か言うと、間髪入れずなんか気が利いたようなコメントが返ってくる。それだけ、こっちが話してる間に自説を準備してるってことだ。

    「あなたは温かいし、時々はちゃんと話聞いてるし、あんまりフランス人らしくないのかな?」

    「君と暮らしていてフランスっぽさが抜けてきたんだ。まえは、けっこう冷たくて怒りっぽかったんだよ」

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    好き嫌い、嫌い

    「サラダは嫌い」→あっそう。

    「玉ねぎ嫌い」→あっそう。玉ねぎ抜きで作れるものって少ないね。

    「野菜は好き。インゲンとか、グリーンピースとか」→インゲンとグリーンピースの茹でたのを出す→一口も食べない→いつもの(フランス風の)料理法じゃないから、嫌→てか、ここイギリスだし、私フランス人じゃないし。

    「ズッキーニは嫌い」→一口も食べない→前もって嫌いかどうか訊かなかったからねぇ。

    「カレー大好き、でも辛いもの嫌い」→甘口のお子様カレーを作ってやったが、半分以上残す。フランスのインド屋のと味が違いましたかね。

    「肉は嫌い、鶏は好き」→知るか。

    スパゲッティボロネーズを出したら、玉ねぎも肉も嫌いなはずなのにえらい勢いで食べ始めた。が、しかし‥‥半分ぐらいで急に皿の上で弄び始め、結局お残し〜。そんなに不味かったなら、最初の勢いは何だったんだ?

    私の作るものが一般的な味覚で不味いわけじゃないことは、彼女らの祖母(私の義姉)の食べっぷりから明らかだ。外国料理にほとんど馴染みのないフランスの70歳が美味しいと言ってお代わりして食べてるんだから。

    でもね、お嬢さん方、この叔母さんが作るご飯がそこまで嫌いなら、外で食べておいでよ。自分で英語で注文してお金英ポンドで払ってさ。一週間、毎晩飯食いに帰ってこなくていいんだぜ。

    フランスやスペインの子供は好き嫌いしないようには教えられてないから、それは仕方ないけど、作った本人の前でどっさり残す13歳二人って、私も好き嫌いで言うなら嫌いだわ。自分の好みをいろいろ考えた上で人が作ってくれた食べ物だってこと、分かってないとしたら幼すぎるし、分かってて残すんなら傲慢すぎる。

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    おフランス女性ご一行様、おなりぃ〜

    夫の姉とその孫娘二人(私から見ると“又姪”というらしい)が到着した。これから一週間のご滞在となる。んで、三人とも、英語できないんだわ〜。しかも夫は明日と明後日出張で居なくなるんだわ〜。どうしましょうどうしましょう。

    13歳のお嬢様方には別棟をあてがっておいた。バスルーム付きの独立した部屋で女の子二人、早くもガールズトークで盛り上がっているようだ。母屋に入り浸られるよりこっちも楽だし、まずはよしよし。

    母屋の客室に泊まる義姉とは言葉はあまり通じないけど、優しくて洞察力のある人だし、前にも1週間ぐらい泊まりに来たことがあるし、お互い気を使いすぎることはなさそう‥‥たぶん。

    どうしましょうどうしましょうと言っておきながら、今夜はとりあえず、夫におフランス女性ご一行様を任せて、私ひとりでミッツィの家に飲みにいきます。ご近所さん何人かで庭に集まってムサカを食べつつワインざんまいだそうです。ギリシャ人の母を持つミッツィのムサカ、たのしみ!

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    今、海を見ていたんだ

    夫が老人ホームにいるお父さんに電話した。

    「よく繋がったね、ラッキーだ」とお父さんの第一声。
    「どういうこと?」と夫が訊くと、
    「今、海を見ていたんだよ」という返事。

    たぶん、うたた寝して夢をみていたのだろう。亡くなったばかりの妻と、二人とも若く美しい姿に戻って浜辺をデートでもしていたのかな。夫は「お父さん何言ってるの、今居るのは老人ホームの部屋でしょ」という喉まで出かかった台詞を飲み込んだ。

    私が老いた時、もしかしたら夫も側にいなくなった時、私の海辺の話を抱きしめてくれる人はいるのかしら。

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    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

    引用・転載は原則として歓迎ですが、事前にご一報ください。どのような論旨・目的での引用・転載か、把握しておきたく存じます。

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