食べ続ける獣(父)

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    You は何しに日本へ

    昨年末から父が胃に穴が空いたとかで入院し、緊急手術後10日ほどで退院したものの食欲はおろか水も飲めない状態で衰弱し再入院となった。

    これはすぐ日本へ行かにゃと思ったが、兄との連絡でまあ大丈夫らしい、胆嚢が悪いとかで3月に摘出手術をするという話だった。まあどうせ3月には日本へ行くのだから、それまで無事でいてくれればと思っていた。父の入院中、母の手助けも必要だろうし。

    さて、日本に着いてみると、激痩せしていたはずの父は丸々と太っていた。こいつは人間か? サイボーグか?

    一日中座っているか寝ているのに働き盛りを軽く凌ぐ食欲と飲酒量も変わっていない。そして夕食時、私が食べるつもりだった餃子に手を伸ばしながら、「今はべつにどこも痛くも痒くもないから、医者に頼んで手術を延期してもらった」と宣う。できればせずに済ませる魂胆まで見え見えである。

    You は何しに日本へ?

    この機会にとばかりに喪服まで持って飛んできた娘は、落胆のあまり一日起き上がれなかった。

    ガイジンは差別用語か

    日本では、誰が言い出したのか定かでないが、日本人でない人を指す呼称として“外人”はダメで“外国人”は政治的に正しいということになっている。らしい。国籍の異なる両親のもとに生まれた子について“ハーフ”は差別的なので“ダブル”とすべしと主張する人々もいるが、こちらは定着しているとは言い難い。

    奇妙なことに、ガイジンといえばたいていの日本人が真っ先に思い浮かべるのは白人で、外国人というと他の人種もぜんぶ含まれる。

    エスキモーとイヌイト、ラップとサーメのように、当事者の言葉での自称を正規とする、それは理解できる。さらに、ニグロとブラックのように、どちらも黒という意味だが、語自体の意味とは無関係にそれぞれの呼称の用いられてきた歴史的社会的文脈から、呼ばれる側がより心地よい方を政治的に正しいとする。これもなるほどねと思う。

    しかし生まれながらに国民である者との対比で外から来た者を“外人”と呼ぶことがなぜ侮蔑的なのか、腑に落ちない。日本語以外でも、自国民以外を指して Auslander、ulkomaalainen、utlending など、外のの人と言う言語もあれば、foreigner、étrange とはっきり“異物”という意味合いの語が一般に用いられる言語もある。

    私は foreigner と呼ばれることにまったく抵抗を感じない。さらに移民と呼ばれるのも、ステキな響きではないものの事実だから仕方がない。どちらもかな〜りバカにされる立場であるが、余所者として住まわせてもらう以上はそういうものだと腹を括っている。

    だから日本で、珍獣扱いされる以外にはさしたる不便も被っていないばかりか、むしろチヤホヤされている白人が、ガイジンと呼ばれて鼻白む気持ちは、さっぱりわからない。

    日本の食べ物

    日本から昨夜帰ってきた。

    今回の日本であれっと思ったのは、食べ物の味がおかしいこと。今まで日本の食べ物は何でもおいしいと思ってきたのだが、私の舌が変わったのか日本の食品製造産業が変わったのか。

    問題なのは、安い飲食店や弁当屋、コンビニ、スーパーで買う食べ物だ。自分で作ればそんなにおかしな味にはならない。高級な店や旅館へ行けば普通に味付けされたものが出てくる。でも今回は低予算で木賃宿滞在だったので、いきおい「中食」頼りになった。

    まず甘辛すぎる。おかず類は何を食べても塩分の多さと妙な甘ったるさに驚いた。そして、食べ物ではないものが、口にしただけで判るほど気前よく入っている。

    ステビアという甘味料がある。漢方の便秘薬などに入っている甘草が原料で、舌の裏に嫌な苦味を残す。北欧やドイツで人気のリコリスはあれを飴状に練ったもの。初めて食べる日本人の多くがげっと吐き出す味だ。私は実は嫌いじゃないが、さあこれからリコリスを食べるぞと構えていればの話で、寿司の合間につまみたい代物ではない。そんなものが、なぜかガリに入っている。甘くする必要のない漬物や煎餅にまでドバドバ入れる製造者の舌は、どうなってるのだろう。

    同じく化学調味料。私は卵サンドが好物なのだが、卵より味の素の味がする商品に辟易した。石油を原料にしていたのをサトウキビ「由来」原料に変えたので今では人体に害はないそうだが、有害無害以前に不味いではないか。

    メシマズで大不評のイギリスに帰ってきて、夫が買い置きしていた出来合いカレーを食べた。確かに日本のカレーのような凝った味はしない。でも何を食べているのか分かる自然な味だった。塩気もごく少ない。出来合い食品ですら、いや出来合いだからこそ、違いがよくわかる。

    べつにイギリスの業者が良心的なわけじゃなくて、法律で許容される添加物の種類と量が日本よりずっと少ないのだ。

    長い歴史を通して素晴らしい食文化を築いてきた日本が、わざわざ自分からそれを壊そうとしている。残念で仕方がない。

    観光客は忙しい

    日本に一人で来る時は親の家で整理を手伝うぐらいで何もしないので、お気楽かつ安価なのだが、夫と一緒だと費用も努力も数倍になる。なにせ相手はガイジン観光客。今日はこっち、明日はあっちと連れ回さねばならない。おかげでこの10年ほどで東京観光のエキスパートになったが、疲れるのなんのって。

    つまり私は、〈家ー学校ー職場ー通勤通学ルート〉以外の東京を知らなかった。自分が生まれ育ち働いた街を外来者の目で捉えるのって難しい。まず、地元・東京に好奇心がない私と、なんでも見て体験したい夫。そして、地元に対して緊張感がなくオシャレもできない私と、上京したての目一杯都会人で溢れる4月の東京。おまけに私はいまどきの日本で通用する物言いや振る舞い方に慣れていない。

    なんだか肩身の狭い思いをしながら、私が失礼な言い回しでもしたのか不機嫌なお巡りさんなどにビビりつつ、「いやいや、私は日本語上手」などと自分を鼓舞する毎日。それが本日終了となる。朝になったら夫を成田で見送って、あと1週間は親の相手をして、それから私もロンドンへ帰る。

    内容

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    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

    引用・転載は原則として歓迎ですが、事前にご一報ください。どのような論旨・目的での引用・転載か、把握しておきたく存じます。

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