胎児

    この頃ちょっと調子悪くて、ウツウツ気分のまま夫と一緒に友達と飲みに行った。いつものように喋り食べ飲み‥‥でもダメ気味なのはバレていて、「なんか今日無口だね」「それ、美味しくないの?」などと友達に言い当てられ、まぁしゃーねぇかとやり過ごしていた。その時、夫の携帯に着信音。次の瞬間、夫は画面の写真をみんなに見せて笑っていた。

    息子夫妻の、胎児の超音波画像。半分人間、半分液体のグロテスクな生き物。

    笑い声、話の続き、夫の元気な様子‥‥。私は夫に小声で「そういうの、二度と私に見せないで」と言った。夫は「あ、もちろん」と言って電話をしまった。

    人間は、どこまで愚かなんだろう。自分たちの胎児の写真に他人が興味をもつと思う親バカ、おいらの遺伝子の発達ぶり見て見てと一瞬でも思う爺バカ、友だちの孫ならどんな物体でもカワイーと言わなくちゃと思う世間体バカ、自分に関係ない胎児なんて気持ち悪いと露骨に言ってしまう継母バカ。

    どいつもこいつも無神経の骨頂。

    正直言って、ウツの波の最中に見たい画像ではなかった。マイナス3だった気分が7に下がった。仕方ないので今朝、もっといいお薬はありませんかと訊きにかかりつけ医に行った。それではこれをやってみましょうという新しい薬を来週から試行する。

    "I Vow to Thee My Country"

    小林麻央さんの結婚披露宴で花嫁の希望で歌手が歌ったという『ジュピター』。

    私は以前日本へ行った時、この曲に日本語の歌詞をつけて女性歌手が甘ったるく歌っているのを耳にして悪寒がした。

    原曲はもちろんホルストの組曲『惑星』中の“木星”。ホルストの母国イギリスではこれにセシル・ライスの詩をのせた "I Vow to Thee My Country" という讃美歌が準国歌といっていいほど親しまれている。

    ダイアナ妃が自らの結婚式に選曲し、彼女の葬儀でも故人愛唱歌として歌われた。息子のウィリアム王子も結婚式でこの曲を選んだ。そうした重要な儀式にふさわしい重厚で厳粛な曲だ。

    さて一問。 "I Vow to Thee My Country" の Thee とは神なのか、国家なのか。Thee が大文字で始まるかどうか、その後にカンマをつけるかどうかで意味が変わってくる。「祖国も、地上のすべてもわが愛も、あなた(神)に捧げる」のか「わが祖国よ、地上のすべてもわが愛もあなたに捧げる」のか。

    どうやら後者の解釈をとる人が多いらしく、この讃美歌は極右の愛国歌のようにも使われてしまっている。

    私はどうも、どっちの解釈も間違いではないけど、第二節の歌詞から考えるに、作詞者が意図したのは地上の祖国への愛と天上の祖国(神)への献身を結びつけることだったのじゃないかと思う。

    そんなわけで、パイプオルガンと会衆の斉唱でこの曲に慣れていた私は、日本の女性歌手が喉から出した甲高く弱い声で独唱するのに怖気をふるってしまったのだった。ち、違う。ちがう〜。どう違うって、般若心経をNYの黒人グループがズボン尻まで下げてラップでやってる感じ? そりゃあ音楽は人それぞれ好きなように演奏すりゃいいのだけど、同時にそれぞれ生理的にイヤなのもあるってことで。

    相手を見つめる

    人は誰しも、刻一刻と成長し老化し変化している。一日たりとて、昨日とまったく同じではない。誰かを愛している時には、その人の小さな変化にも目がいくものだ。

    今日はちょっと元気ないなとか、髪型が違って見えるかなとかの、小さなことかもしれない。ああ、この人は他の誰かを想っているといった、肝心なことかもしれない。重大な病気に気づくのも、本人よりもその人を愛する誰かってことも無くはない。

    結婚生活で相手の小さな変化に気づかなくなった時、相手が家具のように見え始めた時、愛はなくなっているのかもしれない。

    そんな話を夕べ夫としていた。今のところ愛し合ってるよね、と変な安心を共有しつつ。

    フランス女は、フランス女に生まれるのではない。

    フランス女になるのだ。

    ボーヴォワールはフランスに生まれたからこそ、この慧眼をもてた。

    姪たちを見ていて常々思う。フランスでは、女の子は思春期の訪れと同時に女になる。というか、“女”というチンドン屋をはじめる(最初の2〜3年間は野暮ったさと技術の拙さで、まさにチンドン屋状態)。しかし歌舞伎よろしく早くからはじめる分習熟も早く、大学に入る頃にもなれば他のヨーロッパ諸国の同年齢に比べて格段に“女”らしくエレガントになっている。

    エレガンスは容貌の問題ではなく、態度のことだ。チンドン屋修行の始まる12歳頃から、フランス女子はエラソーに振舞う訓練もする。男子には、思わせぶりにして振り回す。逆に振られたら、女子でつるんで哲学する。ダイエットと化粧の練習は怠らない。恋愛対象になること以外、人生の意味なんてない。けど、食いっぱぐれないために、いちおうバカロレアはとっておく。

    ここまで書くと、日本のおバカ娘とどこが違うのかと思うだろう。違いは、“女らしさ”の定義にある。

    フランス女が目指すのは、官能的、性的、優美で成熟した女。女王と言っていいだろう。
    日本女が目指すのは、あどけなく、弱く、無防備で無垢で低脳な幼女。王女と言うにも幼すぎるだろう。

    そこで終わればまだいいのだが、日本の内股な“幼女”は同時に、すべてを包み込み耐え忍び養い続ける“太母”でなければならない。フランス女のように“女”一辺倒でいるのもご苦労な話だが、それどころの難易度ではない。

    人間のメスの大半には、幼女、娘、女、母、老女のステージがある。猫を飼っているとわかることだが、人間以外の動物は、生涯のうち、子供時代と生殖期(メスに限っては生殖に伴う短い子育て期)以外の大方の時間を、単なる個体として過ごす。人間のメスが、そのパターンに従ってはいけない理由がよくわからない。

    フランス女は子供時代を除き一貫して“女”という個体であるので、七変幻かつ一度たりとも個体でない日本女に比べれば楽だろう。ただし、“女”というトテツモナク不自然なものになりたがる文化には、私は首を捻りすぎて肩が凝ってしまう。

    テーマ : フランス
    ジャンル : 海外情報

    名前

    最近、うちのネコが太ってきた。5歳といえば人間でいえば40近いし屋内猫なので仕方がない。そこで名前をネコからデブに変えようかと思う。しかし、彼女をデブと呼んだら、彼女は私をママではなくバカと呼ぶだろうか?

    ロンドンブリッジ

    テロなんて、今じゃ普通の出来事になっちゃって。息を止めて生活するわけにいかないし、生活を一時停止にもできないから、3日も経つと世の中は何事もなかったかのように動き始める。

    地震みたいなもの。でも地震ほどの破壊の痕も残らない‥‥。って、違うんだけどね。本質的に。地震で原子力発電所が壊れ将来的に累計犠牲者数がテロをはるかに上回る場合を考える。そもそも原子力発電所をやってた輩の責任はどーよってなるけど、ワザワザ、数十万人殺めようと思ってやってたわけでもないんだよね。お金欲しかっただけで。

    その点、テロは戦争と同じで、殺すことそのものが目的なので、本当は同じじゃないのだ。

    テロを誘引したのが「お金欲しかっただけ」で他国を蹂躙し続けた西側先進国のエゴであることは、今日のところは考えないことにして。

    ロンドンブリッジはうちの最寄りターミナル駅だし、バラーマーケットにはたまに行くので、「いつもの」「普通の」テロよりもっと悲しくなった。テロの翌朝、夫はロンドンブリッジ駅乗り換えで空港へ行き中国出張に出かけて行った。
    プロフィール

    シカ

    Author:シカ
    夫のカエルとともにヨーロッパに住むシカです。シカは日本生まれですが、ここ20数年イギリス、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ドイツ、振り出しに戻る(イギリス)と流れてきました。カエルはフランス生まれです。詳しくは自己紹介ページへ。

    引用・転載は原則として歓迎ですが、事前にご一報ください。どのような論旨・目的での引用・転載か、把握しておきたく存じます。

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